2010年2月24日水曜日

人間の視野とディスプレイ

人間の視野は横長にできているらしい。ある論文では、人間の視野について以下のように説明している。

人間の視野角は水平約200度,垂直約125度(下75度,上50度)に達する.しかし,視細胞の分布や眼球の構造上,中心ほど分解能が高く注意も向けやすいという性質があるため,人間の視野は注視点を中心とする幾つかのいびつな同心円状に分類される.情報受容能力に優れる有効視野は水平30度,垂直20度程度に過ぎず,注視点が迅速に安定して見える安定注視野は水平に60~90度,垂直に45度~70度程度である.

これらの値から、人間の視野にあったディスプレイのアスペクト比について、考察していきたい。以降において、アスペクト比はm:1の形で表現され、mの値でアスペクト比を代表させる。参考までに、4:3のときm=1.333、16:10のときm=1.6、16:9のときm=1.778である。さらに、黄金比ではm=1.618、白銀比ではm=1.414である。

まず、さきほどの引用における「有効視野」に対応するアスペクト比を計算してみる。人間の目のある平面から距離Rにある平行な平面を考え、それから有効視野に相当する分を切り出すと考える。このとき、その長方形の幅 x = 2R tan(30°) 、高さ y = 2R tan(20°) となるため、m = tan(30°) / tan(20°) = 1.586 となる。

以上の計算から、大まかにであるが、人間が「意味のある」視覚情報を手に入れられる視野は、16:10に近いアスペクト比を持つということがいえる。となると、最近流行しているらしい16:9のディスプレイは、横に長すぎるかもしれない。さらに、16:10の比率は黄金比にも近いため、多くの人にとって均整が取れているように感じられることだろう。

しかし、以上の考察には問題がある。必ずしも、視野を覆うようなディスプレイが望ましいわけではないのだ。Webブラウジングなどで文字を表示することを考えてほしい。試してみるとお分かりいただけると思うのだが、文字を読める視野は想像以上に狭い。ゆえに、視野は画面のごく一部をなぞることになるから、文字を表示するディスプレイのアスペクト比について、視野から考察することはあまり意味を成さないはずである。

コンピュータ上でよく用いられる、横組みの文字列について、望ましい表示方式を考察してみよう。まず、横方向に長い組み方は望ましくないと考えられる。なぜならば、ある行の終わりから次の行の始まりまで、視線の移動が大きくなるためである。雑誌やカタログなどで段組をみることがあるが、これは横幅を抑えるために有用である。逆に、縦方向の長さは問題にならない。次の行に移るためには、行の高さ分だけ視線を移せばいいからである。

したがって、横組みの文字列は、行の文字数は押さえながら、行数を増やした縦長の組み方が望ましいことになる。そのことを示すように、横組みが歴史的に用いられてきた欧米の印刷物では、縦長の紙を用いるのが一般的である。

コンピュータ上での表示を考えれば、横方向の表示は画面幅もしくはウィンドウ幅で制限して、縦方向はスクロールで対応させることになるだろうが、この場合、縦方向の表示範囲が狭すぎると、頻繁にスクロール操作が生じてしまい、利便性を損なうことになってしまう。

ゆえに私は、ディスプレイの縦方向の画素数が多いほうが望ましいと考えている。Webページとかテキストとか、ひとまとまりの情報をできるだけ少ないスクロール数で見ようとすれば、縦画素数は多くあってほしい。とはいえ、縦長ディスプレイを望むほどではなく、横方向は複数のウィンドウを並べるのに有用だから、ワイドディスプレイが嫌いというわけでもない。

しかし、ワイドディスプレイ、とくに16:9ディスプレイが多くなることで、縦方向の画素数が犠牲にされているように思えて、気になっている。私個人の好みでは、縦方向に1000px程度はほしいところなのだけど、16:9ディスプレイでそれを満たすのはFull HD しかなく、横方向は1920pxにもなってしまう。

デスクトップで使う限りでは、横に広いディスプレイでも問題ないのだが、ノートパソコンではそうもいかない。ディスプレイの大きさが本体サイズを決めてしまうので、縦解像度を維持したままワイドにすると、横方向に伸びて結構大柄になってしまう。見た目の美しさも気になるところで、4:3なら(ちょっと差が大きいが)白銀比に、16:10なら黄金比に近いのだけど、16:9ではだいぶ横長に見えてしまう。

…なんだか酒を飲みながら書いていたら長くなってしまった。図をつければ読みやすい記事になろうが、この酔っ払いはそれをあきらめた。というわけで、とりあえず投稿します。